温暖化はどうして起こるか
太陽の光は地上に到達すると、地表面を暖める。すると地表面の温度によって決まる波長の長い赤外線が地表面から宇宙へむかって放出される。空気中の温室効果ガスはこの赤外放射を吸収する度合が大きい。このため大気の温度が上昇する。これが温室効果である。温室効果ガスとしては、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素(N2O)、フロン、六弗化硫黄などがある。最も影響の大きなものは二酸化炭素である。
ハワイ・マウナロアの炭酸ガス濃度
化石燃料(石油、石炭、天然ガス)の使用により空気中の二酸化炭素濃度が年間1.5PPM増大している。スクリップス海洋研究所のキーリングは1958年、ハワイのマウナロアで観測を開始し、実際に濃度が上昇していることを発見した。二酸化炭素濃度は、産業革命前に280PPMV(体積割合)、現在は360PPMになっている。排出した二酸化炭素の58%が空気中に滞留する。吸収源は海、森林、土壌などだが未解明の部分もある。
2013年5月11日付の朝日新聞は「半世紀以上の歴史を持つ米ハワイ・マウナロア観測所での大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が初めて400ppm(0.04%)を超えた。観測所を運営する米海洋大気局(NOAA)が10日、明らかにした。9日の平均CO2濃度が前日を0.61ppm回る400.03ppmとなり、観測史上最高を記録した。CO2を吸収する植物の光合成が活発になる夏に向けてCO2濃度は下がるため、例年5月ごろにピークを迎える。」と、伝えている。
以下のグラフはマウナロアで観測されたそれぞれ短期と長期のCO2濃度の変化を示している。最新の情報を含んでおり、ここに併記する。(NOAAホームページより転載)
海面が1m上昇すると0m以下となる地域
地球温暖化が生じると、海水が膨張し、氷山が溶け出すので海面が上昇すると予想されている。1988年、IPCC(気候変化に関する政府間委員会)が国連と世界気象機関により設立され1995年末に第2次報告書を発表した。第2次報告によると温暖化が生じており、人間の活動がその原因と考えざるをえないという。予想される平均シナリオでは21世紀末には平均2度Cの温度上昇、50cmの海面上昇。最大では3.5度Cの上昇、約1mの海面上昇になる。この傾向を止めるには大幅な化石燃料使用の低減が必要である。海面が1m上昇すると、東京23区のうちの4~6区が0m以下になる。
J・ハンセン博士の証言
1988年6月、NASAゴダード宇宙センターのハンセン博士は、上院エネルギー委員会で「私は99%の確率で地球温暖化が起きていると思う」と証言した。この日はそれまでのワシントンで最も暑い日と記録された日であった。これをテレビで見たたひとびとはその日すでに地球温暖化が生じているために暑いのだと思ったという。これ以後、マスコミは地球温暖化問題を頻繁に取り上げるようになったと言われている。
COP3
1990年レベルを基準にして2010年の各国の温室効果ガス排出の法的拘束力をもつ削減量を決定するために、京都国際会議場で第3回締約国会議(COP3)が開催された。日本は議長国となり、米国のゴア副大統領をはじめ、180ヶ国の代表が集まった。
COP3京都会議用語
COP3は、軍縮会議と同じように、各国がその事情に応じて様々に有利な道を見つけようとした会議であった。そこでは、各種の用語が生み出された。
当初、EUは2010年に15%削減を主張。日本は国ごとに差異のある方法で2010年に5%の削減案(実質的には2.5%に相当)米国は削減量ゼロを主張した。 EUバブルはヨーロッパが合同で削減する案。英国、ドイツは削減するが、ポルトガルやギリシャは増大する。
バスケット方式は各種の温室効果ガスの合計を削減する。
ネットアプローチは、正味の計算をするために森林の二酸化炭素吸収を差し引く方式。
JUSSCANNZは、大きな削減量を主張しなかった国(日本、米国、カナダ、ニュージーランドなど)に対する皮肉をこめた略称である。
ホットエアは経済崩壊のためすでに90年より排出量が減少しているソビエトの排出枠(他国に販売可能といわれる)。
ボローイングは排出し過ぎたときに枠を前借りすること、バンキングは削減しすぎたらその分を貯金できる。
エミッショントレードは国家間で排出枠を売買すること。
京都会議の結論(1997年12月11日)
京都会議の結論:
対象とするガスは、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、PFC(パーフルオロカーボン)、SF6(六弗化硫黄)の6種に決定した。先進国全体で5.2%の削減、EU8、米国7、日本とカナダは6%の削減を決定した。そして、柔軟性条項と呼ばれる条件がいくつも加えられた。1990年以降の植林について吸収源とみなすネット方式が認められた。 目標期間は2008年から2012年までの5年間。もし目標を上回れば次期目標期間へ繰り越せる(バンキング)。ボローイング(前借り)はできない。複数国共同で数値目標の達成ができ、先進国間の排出権取り引きや共同実施を認める。開発途上国の参加を促すためにCDM(クリーンデベロップメントメカニズム)が定められた。条約の発効には55カ国以上の締結かつ参加国における排出量が55%をこえることが必要である。
温室効果ガス排出量の推移
基準年1990年の温室効果ガス排出量がCO2換算で12.61億トンであり、これに対して2009年度の排出量が12億900万トン、2010年には12億5600万トンになっている。2008年にはリーマンショックにより世界的な経済の停滞が発生したため、この2007年度に比べて、排出量は大きく減少している。2010年には1990年比で+0.4%になっている。 日本政府は、京都議定書の約束期間2010年(実際には2008-2012年の5年間の平均)に、1990年比で6%の温室効果ガス削減目標を達成するための計画を作成している。 2008年からの京都議定書の約束期間の5年間の平均でみると削減目標を達成するには、森林吸収で3.8%、京都メカニズム(CDMなど)1.6%だけで実現可能かもしれない。しかし、2011年の原発事故のあと、2012年のCO2排出がどうなるか予断を許さない状況となっている。
エネルギー利用効率
デンマーク工科大学のヨルガードによればエネルギー利用効率は3つの効率が影響する。まず、ボイラーの燃焼効率やエンジンの動力変換効率のような機器効率、つぎに都市計画や公共交通など社会システムによって決まる社会的効率、最後に価値観やファッションによって左右されるライフスタイル効率がある。機器効率は技術者や企業が、社会システムは政治家や官僚が、ライフスタイル効率はマスコミや個人の力で改善できるものである。
分散型エネルギーシステムへの移行
分散型エネルギーシステム
これまでエネルギー供給システムは、大規模集中型発電所に見られるように、都市部などの需要地から遠い場所に建設され、送電線によって大電力を送電することが行われてきた。これに対してエネルギー需要の近くから損失のすくないエネルギー供給方法がある。住宅の屋根においた太陽熱温水器や太陽電池。農場の近くの風力発電やバイオガス装置。都市内のビルや集合住宅に天然ガスから電力と熱を供給するコジェネレーション。将来は、このコジェネレーションには、自動車用に量産化された燃料電池が利用できることになろう。
二酸化炭素を減少させる方法(How To Reduce CO2)