太陽電池と学習曲線



学習曲線は、継続して行われる人間活動が知識と経験を蓄積してゆき、より無駄をなくし巧妙に行われることをモデル化するものである。過去の多くの工業製品に関する実測結果から、以下のような学習曲線の原理が導き出されている。[1] 「累積生産量が2倍になるとき、生産コストや生産に要する時間が一定割合だけ低下する」 学習曲線を定式化すると以下のようになる。

Yn=AX-β          (1)
ここで
Yn:n番ユニットの単位あたりのコスト
X :1からn番ユニットまでの累積生産量
A :第一番ユニットの生産コスト
β :累積生産に伴うコストの減少割合
さらに XaとXb という二つの時期の累積生産量がちょうど2倍になる場合に
Xb=2Xa           (2)
進歩指数(Progress Rate)Fを以下のように定義する。
F=Yb/Ya=Xb/Xa=2-β     (3)
Fとβは以下のような関係がある。
β=-logF/log2         (4)

すなわち、進歩指数Fは累積生産量が2倍になるときのコスト低下の割合を示している。この値が小さければそれだけコスト低下の度合いが大きい。 学習曲線のグラフは、横軸に累積生産量をとり、縦軸にコストをとると図のようになる。初期には急激にコストが低下するが、次第にそのコスト低下の割合は緩やかなものになっていき、最終的には定常状態に近づいてゆく。70-80%、機械組立て産業では80-90%とされている。進歩指数が小さいと累積生産量が増大するにしたがって、極めて大きなコスト低下が実現されることになる。
最初のコスト低下は、研究開発と生産量の拡大によるものであったが、80年代末からエネルギー価格の低迷に影響されてコスト低下が生じなかった。卸売物価指数で換算すると進歩指数が100%を越えている時期もあった。しかし、95年以降には再び、急激なコスト低下が生じている。これは政府のPV設置者に対する補助政策によって普及が推進されたためと考えられる。



1979-2009年の学習曲線による分析を行うと、累積生産量が2倍になるときコストが82%に低下している。2000年を越えてこの傾向はやや緩やかになっているが、さらにコスト低下の可能性があり、将来的には既存電力と競合すると思われる。


ソーラーアシスト・カー

ソーラーアシスト・カーは、太陽電池を電気自動車や燃料電池車のルーフとボンネットに搭載して、発電した電力を走行用に利用するクルマである。 100%太陽に依存することはむずかしいが、年間走行エネルギーの20~30%を供給することは可能である。 太陽電池で発電した電力は、バッテリーに充電するか、水を電気分解して水素にしてサブタンクに貯蔵する。




参考文献
1.Frank krawiec at.al, An Investigation of Learning and Experience Curves, Solar Energy Institute, USA, 1980
2.H.Tsuchiya, Photovoltaic Cost Analysis Based on Learning Curve, Solar World Congress, 1989, Kobe, Japan
3.早野拓朗、槌屋、新エネルギーのモデル化とシミュレーション、エネルギー・資源、Vol..11,NO.2,1990.
4.槌屋、学習曲線による新エネルギーコストの分析,日本太陽エネルギー学会誌、vol.25, NO.6,1999
5.槌屋、ソーラーアシストカーの設計、日本太陽エネルギー学会誌、VOL.32、NO.3、2006